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妻が「引っ越したい」と言った、ある日のこと
「静かなところに引っ越したい」
ある日、妻がそう言ったんです。
大阪市内の駅近マンション。どこへ行くにも便利で、僕自身は特に不満のない暮らしだと思っていました。
だから、最初は正直驚きました。でも、妻の表情は本気でした。
知らない人にかけられた、たった一言が刺さることもある
「スーパーで、知らないおばさんに意地悪されたの」
ある日、妻がそう言ったことがありました。内容は教えてくれませんでしたが、その時の表情に、ちょっとしたショックがにじんでいたのを覚えています。
日常の中のささやかなやりとりが、心をすり減らすこともあるんだと、あらためて感じた出来事でした。
「娘の結婚相手を、この家に呼べない」——妻がこぼした本音
家が狭くて、古くて、昼間でも電気をつけないと暗い。
そんな家に、長女が将来、誰かを連れてきても「呼べない」と妻は言いました。
僕はそこまで気にしていなかったけれど、妻はずっと感じていたんでしょう。家に人を呼ぶことに、自信が持てなくなっていたのかもしれません。
パート先での人間関係。たった3ヶ月で辞めた理由は聞かなかった
妻は、ある時期に新しいパートを始めました。でも、3ヶ月ほどで辞めてしまいました。
理由は詳しく話してくれませんでした。ただ、「あまりいい感じじゃなかった」とだけ。
僕はそれ以上聞きませんでしたが、もしかすると、それも「もうこの暮らしを変えたい」と思うきっかけになっていたのかもしれません。
妻が変えたかったのは、場所じゃなくて空気だったのかもしれない
住まいそのものよりも、日々の中にある「なんとなくの息苦しさ」だったのかもしれない。
人との距離、家の閉塞感、騒音、暮らしにくさ。何か一つではなく、いろんな“小さな違和感”が積み重なっていたんだと思います。
それに気づいたとき、「じゃあ、一緒に変えてみようか」と、僕は思えました。
引っ越しのきっかけは、大きな事件じゃなくてもいい
大きな出来事がなくても、人の気持ちは動くんだと、今回のことで実感しました。
あのとき、妻が口にしたひと言がなかったら、今の暮らしはなかったかもしれません。
あの一言が、家族の未来を少しだけ動かした。
「もうちょっと、気持ちよく暮らしたいな」——そんな想いに、そっと耳を傾けてみること。
それが、家族にとっていちばんの幸せなのかもしれません。